研究概要 |
22年度の研究では,まず,メトロノーム音や他人の声といった発話流暢性を促進させる聴覚的な刺激を用い,刺激がある場合とない場合で,吃音者特有の神経活動が報告されている部位においてどのように異なるかを検討した.結果では,聴覚野の活性パターンが異なると同時に,近年関連が示唆されている大脳基底核が顕著な差を示した.通常の発話状態では吃音者は非吃音者と比較して大脳基底核の活動が有意に小さかったが,リズム条件では話者間のグループ間の有意差が消えた.基底核はリズム生成に関わることが知られている.従って,吃音が語のリズムミックな生成の機能と関わることが示唆される.また流暢性促進法発話を数か月に渡り練習し,神経の可塑性を調べる実験を開始した.この実験は,前者の実験を長期に渡って練習を行うもので,現在も実験が続いている.吃音者群,非吃音者群に対し,2ヶ月以上の流暢性発話練習を依頼した.練習を指示通り行っていることを確認するために,被験者には適宜メール等で励ますと同時に,日誌をつけてもらい,最後に実験実施者に戻すように伝えた.練習前後に1回ずつ,通常の発話中およびリズム発話中のMRI計測を行った.現在までの結果では,長期のリズム調整法により発話流暢性が増すと同時に,脳の活性パターンが変化することが分かった.吃音者は練習前には分散的な活性パターンを示していたが,練習後は非吃音者の活性パターンと類似したパターンに変化していた。また,大脳基底核の活性パターンも練習前後で変化した.今後も練習効果を引き続き検討していきたい.
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