研究概要 |
吃音の発話流暢性を高める条件がいくつか知られている.その中でも、メトロノーム音を用いるリズム調整法や、他者の声へ同期するコーラス効果などは、外的な聴覚音が発話のペースメーカーとして働くという点で類似している.これまで、タッピングなどを用いた神経科学研究では、内的にタイミングを取る運動条件と、外的な刺激に合わせて運動を行う条件の神経処理の違いについて多く研究されてきたが、発話、特に吃音の現象では十分に研究されていない.本研究では、メトロノーム音と他者の声を用いた流暢性促進条件を用い、その神経基盤について検討してきた結果について、さらに解析を進めてきた.吃音者のグループは非吃音者のグループと比較して、聴覚野や大脳基底核の活性が小さく、重症度とも負の相関をしていた.しかし流暢性が高まると非吃音者の程度まで回復することが分かった.近年大脳基底核が吃音の原因部位の一つとして挙げられているが、本結果はそれを支持する結果であり、その機能不全として、発話の際に必要な語のリズミカルな生成や感覚-運動統合の不全が示唆された.これらの結果について論文としてまとめ,国際誌に投稿し掲載された(Neuro Image,2011).吃音の非流暢性を一時的に高める手法における脳活動を計測してきたが,今後は長期的な練習効果により,どのように脳の活動や構造が変化するのかを調べていきたい. 外的な聴覚刺激の効果が運動を促進するという点で発話と類似している歩行運動に着目し、聴覚刺激を受聴しながら疑似歩行タスク行っている際の脳活動をMRIを用いて計測した結果について、さらに解析を進めた。内的に駆動される運動条件と外的な刺激によって駆動される運動条件を比較したところ、発話と同様に、大脳基底核など深部の活性に違いが観察され、論文としてまとめ国際誌に投稿し掲載された(Neuroscience Letters,2012).
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