研究概要 |
特定の触感を惹起する材料の設計は,現在触感が重要視されている化粧品,繊維製品,皮革製品,木材等にとどまらず幅広い材料に要求されるようになってくることが予想される。しかし,触感の評価に広く用いられている官能評価は主観的な手法であるため,触感の背後にある物理的現象を捉えることができない。したがって,材料の触感設計に繋がる客観的な触感の評価手法の確立,さらにはそれぞれの触感を定義づける物理モデルの構築が必要である。本研究では,材料の触感設計を最終目的として,触感の定量化を試みた。モデル系として,「しっとり」,「さっぱり」などの触感設計が経験的に行われている化粧水塗布時の触感について,物理パラメータによる評価を試みた。まず触感の主因子を明らかにするため,市販の3社の化粧水サンプルを用いた触感の官能評価を行い,その結果について因子分析を行うことにより,触感の主因子を抽出した。次に,主因子のそれぞれに対応する物理量を明らかにするため,各サンプルについて熱分析,せん断流動試験,摩擦係数の測定などを行った。これらの結果から,物理量を用いた触感の算出を行い,実際の「しっとり感」「さっぱり感」の官能値との整合性を検討した。その結果,官能評価のデータをもとに触感の因子を抽出し,個々の因子に対応すると考えられる物理量を測定することで,物理量から触感の官能値を推定することができた。また,その過程で,触感の各因子は単純に一つの物理量に対応することは少なく,いくつかの物理量を用いた式で表されること,また単なるサンプル単独での物理量よりも,ぬれ性などの皮膚との相互作用を考慮した計測法を工夫することで,さらに高精度な推定が可能であることが示された。さらに,本手法で構築した計算法が他の未知のサンプルに対しても適用できる可能性が示された。
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