本研究では、多くの人に受け入れられる製品やサービスの開発のための、製品から人が受ける印象の新しい評価方法を提案することを目的とする。そこで、ユーザの受けるさらに奥深い印象に注目し、「製品から受ける印象の奥には、その印象を生じさせる源のようなものが潜在している」、つまり「なぜその印象を受けたのかという拠り所がある」と考え、その印象の源を探る。 本年度は、この「印象の源」の役割を演じているものを抽出する方法を提案した。本研究では、人の受ける奥深い印象は、断片的な言葉からではなく、それらの総体からとらえることができる、また、その印象は、明示的に表現されない場合があるという観点に基づき、印象の源を抽出する方法を構築した。この方法では、「犬は動物である」といった「犬」と「動物」の間にあるような関係によって構成されたネットワーク(意味ネットワーク)を使って、人が発した印象を表現した言葉の間を仮想的につなぎ、それらを総合した印象のネットワークを作成し、「印象の源」と考えられるものを抽出する。「印象の源」として、二つの案を検討した。一つはネットワークの中心と想定される語と、もう一つは、ネットワークの構造的特徴である。これらの「印象の源」について、モノに対する好き嫌いの違いは、印象の源によって説明できるのではないかと考え、好きなもの、あるいは嫌いなものから受ける印象を、人それぞれ様々な言葉で表現されるが、その印象の源のレベルでなんらかの共通性が見出せるかどうかを検証した。その結果、どちらの案においても、共通性を見出せたことができ、印象の源が存在しているという仮説の妥当性を示すことができた。どちらの案が「印象の源」として妥当であるかの検証は次年度行なうこととする。
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