研究概要 |
本研究では,生態情報である脳の活動状態と言語情報であるテキスト文章を利用し,ユーザが持っている潜在的な嗜好を推定する手法を開発することを目的としている. 本年度は研究の基盤作りとして,主に脳波の測定を行った.脳活動測定装置(EEG)を装着しながら映画を視聴する被験者実験を26名の被験者に対して行った.この被験者実験から,本研究で必要不可欠となる脳波データ,ならびに,嗜好推定に必要となる感情に関するデータを取得することができた. これらのデータを用いて,人の感情を推定するアルゴリズムを開発した.アルゴリズムはまだ完成には至っていないが,すでに販売されている既存の感情推定システムと比較して,同程度の推定精度を現段階で得られている.今後,研究を続けることで更なる精度向上が期待できると考えている. 言語情報に基づく潜在的嗜好推定に必要となる「表在嗜好の推定」,「暗黙嗜好の推定」,「意識下嗜好の推定」のうち,本年度着手予定であった「表在嗜好の推定」,「暗黙嗜好の推定」に関するアルゴリズムの開発にも着手した.これらの推定アルゴリズムは,これまでの研究成果を基に改良・拡張することで実現することを目指している.具体的には,長い複雑な文章や複数の文章で構成されるテキスト情報から適切に感覚や感情に関する情報を解析できるように拡張している.解析した情報を基に連想処理を施すことで,文章の内面に存在する背景・情景・思い・印象・心情などに関する嗜好を推定する. 現段階において,既存のアルゴリズムと比べて約30%もの精度向上の実現に成功している.今後,更なる精度向上の可能性があることを確信している.
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