研究概要 |
本研究は,書字動作における「暗黙知の明示化」と「暗黙知と個人性との関連性の明示化」が目的である.本研究における暗黙知とは,腕・首などの筋電位データ,着座時の圧力データ,筆跡文字軌道,筆圧,筆速などのデータ間に見出される協調的因果関係のことを指し,個人性とは,本人と他人を判別することができる特徴や知識の集合のことを指す.研究期間内に達成することは,(1)どのデータとどのデータに協調関係があるのか明らかにする,(2)協調関係を具体的に知識化する,(3)協調関係に個人性はあるのか明らかにする,の3点である. 上記3点の達成を目指し,腕・首などの筋電位データ,着座時の圧力データ,筆跡文字軌道,筆圧,筆速,筆記具の傾きなどの計測を行い,複数時系列間の協調関係を発見する実験を行っている.現在までに達成した事項および新たに明らかとなった問題等は以下の点である. 1.データ計測からルール化までの枠組み(プログラムの作成から解析ツールの使用法のノウハウまで)を構築し,小規模ながら実際に解析を行っている. 2.筋電データと電子タブレットデータ間の協調関係分析は,同期ずれ等の新たな問題の発生(同期ユニット等の備品追加購入の必要性)があり,現状の予算内では限界があることがわかった. 3.筋電データ間,電子タブレットデータ間のように同期ずれが問題とならないデータ間では,個人と他人を判別することができる可能性を発見することができている. 4.着座時の圧力データの分析では,着座時の活動内容に応じた安定状態と非安定(活動)状態が存在し,k-means法などのクラスタリング技術を応用したアルゴリズムによってそれらの区間を分節化することができることがわかった.書字における着座状態の変化等の検出に利用できると考えられる.
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