研究課題
人類学の研究は、既知の人間社会の多くにおいて何らかの「リーダーシップ」が存在し、重要な役割を果たしてきた(集団行動の効率化と集団の利益の向上)ことを報告している。また、リーダーシップの形成に関する心理学の実証・実験研究は古くから多数あるが[Bass 1990]、それらの中でも注目すべきものとして、(i)リーダーの"trait"に着目する一連の研究と(ii)リーダーシップが形成される"situation"に着目する一連の研究がある。本研究の目標は、リーダーシップの進化のメカニズムを解明することである。具体的には、[目的A]どのような戦略がリーダー・フォロワー関係を効率的に構築できるのか、[目的B]どのような戦略がリーダ0の立場を安定的に維持できるのか、そして、[目的C]これらの戦略はどのような条件の下で進化するのかを、ゲーム論モデルに基づいた進化シミュレーションにより分析する。平成21年度の研究では、リーダー・フォロワーの力関係と両者の相補性を表現した利得行列でプレーヤー間の一度の相互作用を記述し、集団内のプレーヤーがこの利得行列で繰り返しゲームを行う状況に関する進化ゲーム論的分析と、進化シミュレーションによる分析を行なった。その結果、(1)上手く行動をコーディネートできない相手に自分からは譲らない(2)いったん指導者の経験をすると積極的に振る舞う(3)自分が指導者になった記憶がない場合は相手が常に積極的で指導者の経験もあるなら相手に追随する、という3つのアルゴリズムを併せ持つ戦略群が集団内に広まり安定化することが分かった。なお、この成果は、Evolutionary and Institutional Economics Reviewに掲載され、進化シミュレーションの結果の詳細と、上記(i)(ii)の実証・実験事実との関わりについても議論した。
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日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 52
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