研究概要 |
【背景と目的】本研究では,現実の市場でありながら将来を予測するツールとして用いるこがでる予測市場について,エージェントベースドシミュレーションを用いてそのメカニズムを分析し,よりい予測を導くための制度設計などに役立てることを目的とする.前年度はそのための問題設定と定式化,フレームワーク作りをほぼ完了したため,本年度は具体的に多様な戦略モデルを考案し,それを共進化させるための最適化・学習技術を発展させることを目指した. 【成果1:強化学習によるエージェントの構成】前年度は単純な戦略モデルのパラメータを共進化させることで一定レベルのエージェント群を得たが,本年度はそこに価値関数(Qテーブル)を用いて強化学習を行うより高性能のエージェント構成法を提案した.本エージェントは既存の複数のエージェント群に対して利益を挙げ,さらにその価値関数マップを分析することで既存のエージェント群の特徴や弱点を発見することにも成功した.即ち本手法は,成熟した市場参加者を生成するための技術としてだけではなく,市場を分析するツールとしても利用できる技術であるということである. 【成果2:モンテカルロ木探索の分析】本研究では遺伝アルゴリズム,事例ベース推論,強化学習などの技術を用いてきたが,意思決定モデルとして近年着目され,囲碁などの分野で急激に進歩しているのがモンテカルロ木探索手法である.そこで,本手法を予測市場エージェントの構成に利用することを念頭に,その挙動を分析した.その結果,本手法の欠点を具体例とともに提示することができた. 【成果3:コミュニティの形成】予測市場・エージェントシミュレーション・モンテカルロ木探索などは比較的新しい技術であり,その交流の場が十分ではない.既存の研究会への運営委員・副実行委員長などでの参加のほか,モンテカルロ木探索が用いられることの多いゲームの年次大会の設立などを行った.
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