研究概要 |
本研究課題では、計算機で正確に実行できる整数演算のみを用いて、区分的線形写像を含む区分的1次分数写像の真軌道生成法を確立し、それをカオス現象のシミュレーション解析に応用することを目的としている。さらに、真軌道生成法によって最も研究の発展が期待できる対象である、通常のカオスとは異なる特異性を示す力学系の研究も併せて行っている。今年度(平成22年度)は、真軌道生成法の構築,真軌道生成法の応用,通常のカオスとは異なる特異性を示す力学系の3方向から研究を行い、以下の成果を得た。 【1.真軌道生成法の構築】 2次元平面の点を整数係数の連立3次方程式の解で指定し、グレブナー基底を用いる区間(領域)判定法を使用することにより、2次元区分的1次分数写像の真軌道生成法を構築した。実際に、構築した2次元区分的1次分数写像の真軌道生成法を、Jacobi-Perron AlgorithmおよびModified Jacobi-Perron Algorithmに伴う写像に適用し、その有効性を確認した。 【2.真軌道生成法の応用】 真軌道生成法をTWFS写像に用いることにより、誤差無しのNoise-Induced Order現象(NIO現象)のシミュレーションが可能であることを確認した。また、高精度な分岐図の描画が可能であることも確認した。さらに、Doiによって提唱された"アトラクタ平均化仮説"の検証も行った。特に、従来の方法では不可能だった数値誤差のスケールでのシミュレーションの結果から、Doiの行ったシミュレーションにおいて数値誤差によるNIOが現れなかった理由を明らかにした。 【3.通常のカオスとは異なる特異性を示す力学系】 適応遅延フィードバック制御系の力学系的特異性を明らかにした。
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