研究概要 |
本研究課題は,超複素数の1つであるクォータニオンを導入したニューラルネットワークモデル(以下QNN)について,その情報処理能力の理論的解析ならびに実工学問題に向けた実装面での問題解決を行うことが目的である.本課題は,(1)クォータニオンニューラルネットワーク(QNN)による3次元情報を記憶可能な連想記憶システムの構築,(2)QNN連想記憶システムによる複数カメラからの動画像における人物追跡システムの構築,(3)量子ニューラルネットワークおよびQNNを融合させたニューラルネットワークモデルの構築,の3副課題から構成されている. H21年度においては,上記課題(1)に関連して,連想記憶システムにおけるパターン記銘手法について検討を行った.パターンを記銘させる場合において,互いに相関が存在する,すなわち非直交なパターンの記銘は連想記憶システムにおいて大きな問題となっている.そこで,従来のいわゆる実数型のニューラルネットワークモデルにおいて提案されている射影学習ならびにその一実装手法である局所逐次学習について,QNNならびに複素ニューラルネットワークへの拡張を行った.射影学習は非直交なパターン群を直交パターン群に写像し,それをHebb学習により連想記憶システムに埋め込むことによりパターン記銘を実現する.この手法では一度に多くのパターンを記銘することが可能であるが,記銘の過程において巨大な擬逆行列を算出する必要がある.局所逐次学習においては,繰り返しパターンを提示し,ニューラルネットワークにおけるニューロン間の結合荷重を逐次的に更新する.この手法では擬逆行列を求める必要がなく,かつ記銘させるパターン毎にその記銘度合いを調節することも可能である.QNNならびに複素ニューラルネットワークにおいてこれらの記銘手法を実現するにあたり,それらの安定性・収束性の証明を行った.
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