研究概要 |
脳の1次視覚野の活動情報が計測できたという前提で,その時に被験者が見ているもの(視覚画像)を推定するアルゴリズムの開発に取り組んだ.具体的には,昨年度の研究より,視覚画像推定問題は,近年著しく進展している超解像問題と本質的に同等ということが分かったため,量・質共に先行研究が充実している当該分野の研究に取り組んだ. 視覚画像推定も超解像も,原画像モデル,観測モデル,推定の評価基準,最適化手法について分類される.本研究では原画像モデルに輪郭を上手く扱えるラインプロセスを用いた複層Markov確率場を採用した.観測モデルは,Gaborフィルタやボケ・ズレ・ダウンサンプリングなどは全て線形変換として統合できるため,これを採用した.これに加え,各画素に独立した正規ノイズが加算されるというAWGNを採用した.評価基準は,原画像と推定画像との平均二乗誤差に基づくピーク信号対雑音比(PSNR)を採用した。この基準から,推定画像に対する推定量はBayes推定の枠組みで,事後平均が最適であると証明できた.最適化手法については,様々な分野で安定した実績を持つ変分Bayes法を採用した.これらにより,既存手法と比較して優れた推定精度を持つ超解像手法を構築することができた.この手法の欠点は計算量で,既存の手法より多くの計算量,具体的には画素数の3乗のオーダーの計算量が必要となってしまうため,計算量の削減が今後の課題である. 尚,本研究の基幹部分は電子情報通信学会ニューロコンピューティング研究会にて発表を行い,第一著者である当研究室修士学生の勝木孝行が2011年3月8日にIEEE Computational Intelligence Society Japan ChapterよりYoung Researcher Awardを受賞した.
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