本研究は、自治体財政が逼迫するなか、公共サービスの効率性ならびに行政評価やその説明責任が求められているという背景の元で、公立図書館のもたらす経済価値を定量的に測定するための手法を構築するとともに、その適用可能性と限界を明らかにしようとするものである。具体的には、主に経済学分野で開発・発展してきた、非市場財に対する複数の価値測定手法(CVM、コンジョイント分析等)を公立図書館、および、そのサービスの評価に適用し、政策評価手法としての有効性について検証することを主たる目的としている。 平成23年度は、CVM(仮想評価法)を用いた市民の図書館サービスへの支払い意思額を推計するためのアンケート調査を実施した。その際、コンジョイント分析を用いた既往調査との比較を行い、各手法によってもたらされる特徴を把握した。 また、全国規模の調査を実施するための基礎データとして、既存の定期的な公立図書館統計では調査されていない「図書館協議会の実態」ならびに「資料の紛失とブックディテクションシステムの導入状況」に関する調査を実施し、全国的な動向を把握した。 さらに、公共図書館への電子書籍の導入が進展する中、電子書籍端末と従来からの紙媒体による読書との間にどのような差違があるのかを検証するための実験を行い、その成果を公表した。
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