引用ネットワーク分析は、学術分野の全体像を俯瞰するための手法として国内外で広く研究・開発がなされているが、国内においては既存の手法を特定の分野に応用したものが多く、汎用性の高い基礎的な研究が十分に行われているとは言い難い。本研究は、引用ネットワーク分析において、様々なリンク形成手法やネットワーク指標を用いて、手法間の比較分析を通して、有用な手法を開発することを目的としている。 本年度は、引用ネットワークのクラスタリング手法に関する研究、ならびにネットワーク指標を用いた分野横断性の評価に関する研究を行った。クラスタリング手法に関する研究では、エネルギー分野、環境分野、応用物理・材料分野等を対象に、引用ネットワークを升成し、クラスタリングの精度を比較した。その結果、引用ネットワークに対し、クラスタリングを用い頑健な結果を得るためには、分野にかかわらず、約百~数千の論文数が必要なことが分かった。この結果は、クラスタリングを引用ネットワークに対し応用する際に極めて有用なガイドラインとなる。分野横断性に関する研究では、サステイナビリティ学を対象に、複数の論文を繋いでいる論文の抽出を行った。媒介中心性やハーフィンダール指数等の複数の指標を用い、各論文に対しスコアを付与し、その論文の有する学際性の評価を行った。その結果、複数の指標を組み合わせ使用することにより、汎用性の高いツールの開発や、分野横断性の高い政策、哲学的考察等、複数の異なる特徴を有する論文を選択的に抽出可能であることが分かった。この結果を用いることで、サービスサイエンス等の分野横断性の高い他の領域においても、学際性の高い有用な論文を抽出することが可能である。
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