研究概要 |
本年度は交付申請書に記載した「研究実施計画」に従って主に以下の3つについて研究を進めた. (1)マルチバンドカメラシステムの改良 改良したマルチバンドカメラを用いて日本刀の反射特性を計測した.ここでは日本刀独自の光反射モデルのパラメータ推定を行い,その精度を向上させることができた.この段階で日本刀独自の光反射モデル構築は完成したので,現在その成果を学術論文にまとめている段階である. (2)絹織物を対象に光反射モデルの試作 新たに絹織物を対象に光反射モデルの構築を行った.ここでは絹織物表面の微細で複雑な織構造の光反射プロセスを計測するために,マクロレンズを用いた拡大画像による解析手法を開発した.また複雑な織構造の反射特性を解析するためにクリンプ理論に基づいた織の3次元構造モデルを構築した.これらの研究成果から従来では難しかった複雑な表面構造を持つ物体の分光反射率と反射特性の計測精度が向上した. (3)GPUレンダリングシステムの開発 デジタルアーカイブした情報に基づいて,美術品を3DCGで映像再現するためのシステムを開発した.本研究で構築している反射モデルをGraphics Processing Unit (GPU)上に実装したことで高速かつ高精度なレンダリングが可能となった.特に大きな研究成果はこのシステムに「完成した日本刀の光反射モデル」を実装したことにより精密な日本刀の3DCG再現が可能となったことである.また,General Purpose GPU (GPGPU)により分光ベースのレイレーシングシステムを試作した.これによりまだ速度の面で問題が残るもののデジタルアーカイブされた仮想物体間での相互反射の計算が可能となった. なお,昨年度から本年度にかけての本研究の成果から,日本デザイン学会から「グッドプレゼンテーション賞」,情報処理学会から「グラフィクスとCAD研究会優秀研究発表賞」を受賞した.
|