最終年度となる平成23年度は、研究代表者の年度末での転出という事態もあり研究を思うように進行できなかったものの、2つの原著論文(査読付き論文1本、査読のない紀要論文1本で、いずれも国内誌)を含む成果を上梓できた。前者(記録管理学会誌『レコード・マネジメント』掲載)は、平成21年度末に実施した米国アリゾナ州での実地調査に基づくものである。「州立図書館・文書館・記録管理局」がの体化している同州の独自性を踏まえつつも、電子上の政府情報の管理・保存・アクセス提供に関する同州のユニークな方法論、また各種オープンソフトウェアを駆使した実践の試みを分析し、「政府情報の電子化の進展」という課題に直面する日本の関係者に示唆を与えることを試みた。特にアリゾナ州の取り組みを通じ「政府情報の保存・アクセスの新たなモデル」の一端を提示できたことは、本研究の当初のねらいをある程度果たせたものと考える。後者(『国文学研究資料館紀要アーカイブズ研究篇』掲載)は、「ビジネス・アーカイプズ」に関する国際会議への参加を踏まえてのものであるが、政府ほか各組織の内部での記録にかかわる「機関アーカイブズ」、その外部での記録を扱う「収集アーカイブズ」、そしてこの両者を包括的に捉える「トータル・アーカイブズ」の枠組みを提示した。これらの研究成果を通じ、「政府情報アクセス」の観点のみならず、ここ数年のうちに日本国内で活発となってきた「MLA連携(博物館・図書館・文書館の連携)」をめぐる議論にも、一石を投じることができたのではないか、と自負している。の方で、今年度は国際図書館連盟(IFLA)大会に2年ぶりに参加し政府情報アクセスほか図書館をめぐる国際動向の把握ができたものの(『図書館雑誌』にて報告)、この1年のうちに国際レベルでの成果発表にこぎつけられなかったのは反省すべき点である。
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