本研究の調査主題は次の4つである。a) アマチュアのゲーム制作文化の歴史と現状、b) アマチュア制作のゲームの規模、c)アマチュアのゲーム制作文化の「人材育成」機能、d) アマチュアのゲーム制作文化の「表現の多様化」機能。今年度は、アマチュア制作のゲームの中でも「同人ゲーム」に焦点を当てて、開発者・関係者(流通、販売など)へのインタビュー・アンケート調査と資料収集を行い、またその成果を発表した。 事前調査と合わせ、約70名の同人・インディーズゲーム制作者、約20名の関係者(販売・流通関係者など)へのインタビューから、その制作の特徴が、(1) 志向性、(2) 自律性、(3) 柔軟性、(4) 開発スピード、(5) デバッグ、(6) 流通、(7) ユーザーとの距離、(8) 売上、という8つの観点から説明できることが示された。また、アマチュア制作のゲームを委託販売するショップの全国展開、通信販売やダウンロード販売する企業の増加(全国流通の整備)、開発サービスを提供する企業の増加などの社会基盤の整備を背景に、1) 数千本~1万本程度の売り上げる損益分岐点を越えるビジネスユニットとエコシステム(経済的には約30億円程度)が形成されていること、2) このエコシステムの中で、制作者の個性を反映した尖った作品、質の高い作品が持続的に開発され、近年これらの作品をコアとしたメディア展開も増加していること、3) 文化資本(ノウハウ・開発設備)、経済資本(開発資金)、社会関係資本(開発者ネットワーク)、象徴資本(人気・知名度)を蓄積した開発者集団が登場していること、などが明らかになった。この結果は、日本における持続的な小規模ゲーム開発の社会的・経済的可能性、ゲーム業界・学校の外部における表現の多様化・人材育成の可能性を示唆している。
|