昨年度は主として、アマチュア開発者たちの価値観・規範・技能・人脈などについて調査を実施したが、今年度は、こうしたアマチュア・コミュニティがゲーム・コンテンツ産業といかに連関しているかについて調査を実施した。具体的には、(1)アマチュアの同人ゲームの流通・販売を行い、生産者と消費者をつなぐ委託販売企業、(2)アマチュア出身の商業ゲーム開発企業、(3)アマチュア製作の音楽やイラスト(User Generated Contents。UGC)を、商業ゲーム開発に活用した企業などの社員約20名に、インタビューとアンケートを行った。分析には、フランスの社会学者、P.ブルデューの文化・経済社会学に関する諸概念(界、資本、賭金、利害、戦略など)を用いた。 調査の結果、次のようなことが明らかになった。 (1)委託販売企業の業務として、仕入、販売、管理、通販、流通、広報などがあること、また企業の所有資本(文化・金融・商業・社会関係・象徴資本)の総量と構成が、マーケットシェアを獲得するための戦略を方向づけていること。また、アマチュア開発者の価値観を理解し、その信用を得ることが、経済的利益の獲得に必要なこと。 (2)アマチュア出身の商業ゲーム開発企業については、アマチュア時代の資産-資金、技能、信頼・信用、人脈-が、商業ゲーム開発の基盤となっていること。 (3)アマチュア製作のUGCを活用している企業については、作品やユーザーの文化を(短期的)経済的利益以上に尊重し、新しい作品が生まれる場を提供し、「創作の循環」を行っている企業が、名誉や信用だけでなく(長期的)経済的利益も獲得していること。 こうした結果は、アマチュアの創作・UGC文化を尊重し、これを単に活用するだけでなく、その活動を支援すること、また、そのための技能や態度を身につけることが、日本のゲーム・コンテンツ産業の一層の発展のために不可欠であることを示唆している。
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