「放送と通信の融合」をめぐる状況がますます深化し、CATV事業を取り巻く経営環境は変化を続けるなかで、地域社会におけるCATVの存在意義を探るべく、以下の問題意識から調査研究を進めた。一つ目は、CATVコミュニティチャンネルのネットワーク化における広域的な番組制作の取り組みとその流通のあり方である。二つ目は、番組流通エリアの広域化にともなって生じる諸問題・課題とその解決に向けた手がかりに関する問題意識である。本年度は、CATVネットワークの事例として、県域ネットワークとして富山県と鳥取県、超県域のネットワークとして四国と東北、信越を調査した。その結果、こうした取り組みの地域社会への浸透ととともに徐々にその成果が見えつつある状況も窺い知ることができた。番組を蓄積・共有する手法としてサーバ方式はいまや一般的になりつつあり、首都圏などのCATV局においてもローカルな番組へのニーズが高まっている。その結果、制作された番組が全国津々浦々で幅広く視聴可能な状況が生まれつつある。ただし、そうした取り組みに参加する際に、各局のおかれた立場や地域社会の状況等に応じてニーズにバラつきがあり、課題の一つになっている。さらに、三つ目の問題意識として、この度の震災を契機に見直された、平常時とは異なる非常時・災害時における地域メディアの役割・存在意義を探るため、東北地方沿岸部と長野北部地震の被災地・栄村において、地域メディアを対象に調査を行った。その結果、地震の被害状況および災害の様々な段階・タイミングに応じて、各地域メディアが緊急時に地域社会において果たす役割・機能の変容について理解を深めてきた。また、災害後求められる情報が刻々と変化するなかで、各々の情報により適した特性をもつメディアを中心に、相互に連携しながら必要な情報を提供する必要性を認識した。栄村では、震災時に有線放送と各地区の口コミでの避難誘導によってスムーズな避難が行われ、各地区のコミュニティ力の高さが情報システムを補完するような形がみられた。
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