上田貞治郎の写真のデータベース化事業を中心に着手した。特に国際動向との関連と日本の独自性とのバランスを踏まえ、デジタル化について、どのようなありようが適切なのか、情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会の研究と密接に関連しつつ行った。国際動向については2010年2月に同研究会の中で中心となってワークショップを開催し、一つの可能性と方向性を探った。 また、3月には、シンポジウム「写真経験の社会史-写真資料論の可能性-」を開催し、写真に関する総合的な問題意識を集め、同時にこれらを統合するためのプラットフォームとしてのデジタル・アーカイブについて報告した。 これらを総合的に勘案した結果、現在では、ダブリン・コアのメタデータを中心にデータ化すべきであるというある種穏当な結論になりつつあるが、最新の研究動向では、既存の議論の方向性では回収しきれないようなものの生まれつつある。特に、地理情報との統合や、他のデータベースとの積極的な連携を考えた場合に、現状がよいかどうか、なお検討の余地があるといえる。そのため、写真を中心としつつも、それ以外のデジタル・アーカイブの国際動向を見据えることが今後の課題となる。TEIをはじめとした、テキスト関係の国際標準のメタデータの「思想」と方向性、地理情報を統合するためのメタデータの「思想」と方向性、ロンドン憲章のような3Dデジタルアーカイブの標準化動向、そして(シンポジウムなどで明らかにしてきたような)日本がこれまで進めてきた学問のありようとのバランスを考える必要がある。国際標準を輸入することだけでは、日本の学問・社会とはマッチせず、日本の諸資料を「読む」うえでは、障害となりうるおそれもある。次のステップとして、手を広げつつ、それらの課題を考えていく。
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