本研究における写真群の最大の特徴は、上田貞治郎自らが、蒐集した古写真とともに、彼の生きた「現在」を撮影した写真を、両者比較可能なようにアルバムに貼りこんでいる点である。つまり、アルバムに貼りこまれた構成そのものが、昭和初期を生きた写真材料商の歴史意識を叙述するものになっている。そのため、この特徴に即したメタデータを含めたデータベース構築の必要性があった。まず、ダブリン・コアを中心にデータベースのありようについて検討を行った。ダブリン・コアの基礎15要素の現在の普及状況と、本来目指されていた部分には若干の乖離があることが判明しつつあるが、全体の枠組みとして、採用可能なものであることに大きな変わりはない。一方、アーカイブズに関する標準メタデータセットであるEADについては、最近、まとまって論考や実例が出されたこともあり、再度検討を加えている最中である。 また、本年度は、写真のメタデータと同時に、再度「写されたもの」をどのように理解するか、という点について検討を行った。とりわけ、コンピュータにおける知識情報表現について検討を重ね、間接的にではあるものの、いくつかの知見を得て、可能性を見出すに至っている。この点については、次年度、より深めていく必要がある。
|