本研究の目的は、6歳から18歳の健常な小児を対象に、外国語学習に重要となる外国語音声の模倣に関与する神経基盤、および小児の発達によるその神経基盤の変化を、fMRIを用いて明らかにすることである。 この目的を達成するために、前年度までは、横断研究を行い、外国語音声模倣の巧さと、成人で外国語音声模倣で重要な役割を持つことが示されている左下前頭回弁蓋部と呼ばれる脳領域の活動が、ともに年齢と正の相関を持つことが明らかになった(本結果は、国内学会および国際学会で発表済、国際科学雑誌はunder revision)が、前年度後半から本年度は、縦断解析のために、前回参加した小児を対象に募集を行った。しかしながら、予定していた数が集まらなかったために、計画を若干変更し、外国語音声模倣の知覚過程を取り出すデザインとして、前回参加しなかった小児にも募集を広げて、最終的に37名の被験者のデータを得ることができた。 予定変更に伴い、当初の脳機能に関する計画を脳形態へ拡張し、脳形態画像(T1強調像)を用いて、脳局所白質体積および局所灰白質体積を計算し、外国語音声の模倣の巧さとの相関解析を行った。関連する脳形態研究は、成人対象の研究に限られており、外国語学習に適していると考えられている小児の知見は意義がある。解析の結果、小児の縁状回前部の白質体積と外国語音声模倣の巧さの間に有意な正の相関があることが初めて明らかになった。同様の結果が成人対象の脳形態研究でも得られており、縁上回前部が音声産出における体性感覚処理に関わっていることを考えると、成人だけでなく小児においても、外国語音声模倣に体性感覚処理が重要な役割を担っている可能性が示唆された。これらのことは、外国語学習の初期に重要となる外国語音声模倣のメカニズムを理解する上で重要な知見を提供するものと考えられる(本結果は今年の国際学会で発表が決定済)。
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