研究概要 |
平成21年度は、実験課題の遂行に必要な全頭型脳磁気計測装置内で使用可能なポインティングデバイス(トラックボール)の納品が遅れたため、実施計画書の課題1を行う前にまず予備実験を行うとともに、研究計画では平成22,23年度に行うことになっていた信号源推定手法の開発を本学工学研究科生体機能工学講座の小林哲夫教授から助言と技術支援を受けて行った。 1) 既存の手法であるハーバード大学のMNE SUITEは生体内の実環境下における信号源推定の正確さ・妥当性を十分に検証されていない。また、周波数領域での検討、領域間コヒーレンスの推定、DICS等の手法をすぐに適用することができない。このため、難治性てんかんに対する外科的治療の術前検査目的で慢性硬膜下電極留置を行った患者を対象に脳磁図(MEG)と皮質脳波との同時計測を行い、導体モデル・信号源分布・フィルタ法について、さまざまな条件の下で信号源推定の妥当性と最適なパラメータを検証した。この結果は平成21年の第18回国際脳電磁図トポグラフィ会議で報告し、さらに平成22年6月の理論応用力学講演会にて意見交換を行う予定である。 2) MEG計測に際し、患者の体内金属特に歯科金属が生ずるアーチファクトは重大な影響を及ぼし、時にはまったく記録が不可能となることがある。また、近年広く一般診療で使用されているMRI検査は、その強い磁場が歯科金属を磁化させ強いアーチファクトを生じることを経験しているが、この点についてこれまで経験則しかなかったものを各種歯科金属を用いて実際にMRIの磁場に暴露してアーチファクトの入り方を検討し、さらに消磁装置の有効性についても示した。この結果は平成21年12月発行の認知神経科学Vol.11 254-267にて発表した。 3) 課題1については予備実験および実記録を開始し、平成22年度も引き続き行ってゆく。
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