研究概要 |
本研究は「美しさ」や「良さ」などの価値表象の発現に関与する脳内メカニズムの解明を行うことを目的とした3年計画研究の1年目であった。まず,機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて,顔刺激に対する美的価値,好み,魅力,親密度等の価値評価間の脳機能の仕組みについて,それらの共通点と差異について検討した。その際,実験参加者は刺激を受動的に観察し,実験後にアンケート形式で実験に用いた刺激画像を10件法で評価するというものであった。その結果,美的価値,好み,魅力,親密度に応じて活動が変化する脳部位を明らかにした。 また,芸術作品に対する価値判断の中でも「好み」について検討し,解析して得られた脳活動部位の信号値をもとにして,その信号値を機械学習によって実験参加者の好みの判断を逆推定するという研究をおこなった。その時,脳活動信号から刺激の絵画カテゴリーを推定する検討も同時に行った。その結果,肖像画と風景画を区別する推定計算値は,判別推定において90%以上の正答率があることが認められた。この正答率はこれまでに発表されている脳活動信号からの反応推定研究の水準と比較しても非常に高いものであると考えられる。また,好み(好き/嫌い)の推定の場合には主に(1),(2)を解析手法として用いたが,その場合75%程度の正答率を示すことができた。これらの研究が,価値表象を実現する認知的評価機構を明らかにするばかりでなく,潜在意識における選好反応を推定する技術の開発につながると考えられる。
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