研究概要 |
本研究は「美しさ」や「良さ」などの価値表象の発現に関与する脳内メカニズムの解明を行うことを目的とした3年計画研究の2年目であった。1年目に検討した,芸術作品に対する価値判断反応の予測研究の更なる解析と,美的評価とそれに類似する価値評価(美的価値,好み,魅力,親密度等)との脳機能的差異に関する研究を軸とし,前者では,特定の脳部位の活動による予測だけでなく,脳全体の活動を用いた解析を行い,脳機能解析レベルを超えて,ニューロマーケティングとして,脳活動から商品デザインの評価への研究方法を確立しつつある。グループ解析によって得られる活動部位の信号をもとにした予測でもチャンスレベルよりも有意に評価の予測が可能であったが,脳全体の信号を用いることにより,より高い確率で予測が可能になった。そのため,高速のPCを購入し,処理に当たった。後者については,美的評価とそれに類似する評価とを脳の部位として空間的な違いとした表現が可能となり,さらに現在,実験を追加して,時間的な分離を試みつつある。また,美的評価がどのように形成されるかを単純接触効果の課題を用いて検討するために行動実験による研究を行い,fMRI研究で一般的に用いられる20名程度の実験参加者数でも単純接触効果が得られる提示回数や条件設定を確定し,fMRI実験に向けた準備を確立した。これらの研究は,価値表象を実現する認知的評価機構を明らかにするばかりでなく,潜在意識における選好反応を推定する技術の開発につながると考えられ,23年度にて総括的にまとめる予定である。
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