本年度では、研究協力者の鈴木直人・同志社大学教授の進言もあり、3次元顔画像の表情認知構造を探る前段階として、2次元顔画像を用いた実験を行なった。具体的には、これまで未確認であったフラクタル次元の差異の原因の1つと考えられる、繰り返しの顔画像への接触による次元の低下を探るものであった。 被験者を何も行なわせない統制群と、実験前に72枚の顔画像を順次提示する単純接触条件とに分割し、同じ表情認知課題を行なわせた。その結果、両群間のフラクタル次元に統計的な差は見られず、これまでの研究結果と一致した。つまり、繰り返しの接触による表情認知構造の量的差異は確認されなかったのである。 ここで、フラクタル次元を変化させる原因は、個人間変動ではなく個人内変動である可能性が強くなった。 追加の実験で、個人内での次元変動を検証し、その後により現実的な3次元顔画像による表情認知実験を行なうことによって、2次元顔画像と3次元顔画像を用いた実験結果の融合性が議論できるであろう。これら一連の実験は、所属が変わる4月以降に行なう予定である。
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