研究概要 |
昨年度の結果を踏まえ,引き続きサイモン課題を用いて,健常者(若年者,高齢者)および摂食障害患者を対象に反応抑制機能の測定を行った.本年度は前後の試行の関係性を踏まえたサイモン効果(系列効果)の分析に焦点を当ててデータ数を増やした,サイモン効果における同一試行タイプの反復や同一反応の反復の影響を検討した結果,若年健常者と高齢健常者間で系列効果のパターンに差はなく,加齢によって,全般的な認知処理速度が低下するも,反応抑制機能は低下しない可能性が示唆された,このことは,健常な加齢による認知機能低下とアルツハイマー病などによる病的な低下とを区別する指標になり,早期診断や予防,認知リハビリテーションなどによる早期介入の方針の決定において重要な知見をもたらす.本研究で得られた結果をいくつかの学会で報告し,臨床場面での反応抑制検査としてサイモン課題の利用価値を示してきた. 症例データ収集に関しては,当初予定していた高次脳機能障害者やアルツハイマー病患者のデータを収集できる施設の協力が得られなかったため,それらの症例群のデータ収集はできなかったが,抑制機能低下を有する可能性のある他の症例群として,摂食障害患者を対象とした神経心理学的研究を進めてきた.摂食障害者データは現在蓄積中であり,今後の研究として継続する予定である.また,反応抑制機能低下を示す症例に対しては,課題を反復して実施し,反応抑制の改善が認められるかどうかを調べ,アセスメントツールとしてのみならず,リハビリテーションツールとしてのサイモン課題の有効性を検討する.
|