本研究では、Natural Direct Effectと呼ばれる直接効果の考え方を利用し、代替性を評価するための新しい基準を提案し、提案指標について、我が国で実施された大規模ランダム化比較試験であるCASE-J試験への適用を試み、脳血管イベントに対する血圧の代替性の評価を行うことを目標とした。 平成21年度には、予定していた実施計画のうち1.Natural Direct Effectを利用した評価基準推定のためのプログラム作成~3.CASE-J試験の適用、について完了した。プログラム作成に当たっては、割付薬・経過中の血圧・イベント発症以外にも、登録時のリスク因子、経過中の併用薬剤、経過中の服薬状況、有害事象などかなり細かいデータを整理し、京都大学EBM研究センター所属の循環器専門医と共同で実際の薬理作用とそれに基づいて考えられた因果グラフをもとに、妥当な統計モデルの作成を行うことができた。平成22年度には、論文作成が完了し、Clinical Trials誌に受理された。 統計的には代替変数が連続変数であり、真のエンドポイントが繰り返し測定となるデータへの拡張を提案できた点で意義深いと考えられる。CASE-J試験へ適用した結果については、ランダム化比較試験における介入の血圧を経由する効果、経由しない効果を定量的に評価することができ、心血管イベントのうち特に脳イベントに関しては群間に観察された到達血圧の差約2mmHgでも、総合効果のうち血圧を経由した影響が大きいことが明らかとなり、臨床的にも重要な知見を得ることができた。
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