研究概要 |
Satoh & Yanagihara (AJMMS, 2010)によって提案された線形な変化係数は様々なモデルに適用可能であり、論文では経時測定された二値反応データに対する解析例を示した。そして、この研究論文は2010年度の応用統計学会学会賞(優秀論文賞)を受賞した。また、従来の研究では、時間軸方向に対して変化する回帰係数を変化係数として扱ってきたが、Hastie & Tibshirani (JRSS, 1993)の定義では、単に複数の変数で張られる空間上で変化する回帰係数を変化係数として提案している。そこで、冨田・佐藤・柳原(応用統計学,2010)では、空間上の位置によって変化する回帰係数を変化係数曲面として取り上げ、Brunsdon et al.(Geogr.Ana1., 1996)によって提案された地理的加重回帰と対比させながら、線形な変化係数の推測を提案した。さらに、冨田・佐藤・大谷ら(長崎医学会誌,2010)においては、線形な変化係数曲面を空間的なハザード関数に適用することで、広島原爆被爆者の生存時間解析を従来の爆心地からの距離に依存する解析ではなく、被爆位置によって変わりうる解析を可能とした。その結果、北西方向に死亡危険度が高い傾向を示された。この解析結果は、共同通信の取材を受け中国新聞(2010/4/16)など数紙に掲載され、NHKによるテレビ番組の特番(お好みワイド広島,2010/08/05)として報道された。このように、本研究の内容は数理統計学的な内容でありながら、実学に適用可能な側面もあり、社会的にも重要な問題に応用できた。
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