研究概要 |
メタ遺伝子の知見とマイクロアレイデータの発現情報を統合して、ケース・コントロール間の遺伝子発現差に関わる生化学機能に関わる遺伝子集合を同定するための統計的検定理論の開発を実施した。当該年度で対象とした統計的問題は以下の二点である.(1)個別の仮説が与えられたもとで,仮説集合全体の有意性を評価するための方法論を構築,(2)仮説集合間に論理的包含関係がある場合の多重比較検定法を考案した。具体的には、有向グラフ構造で結び付いた仮説集合の多重検定を性能評価する上でFalse Discovery Rate(以下、FDR)基準を導入し,統計的に最適な検定・決定方式を導いた.また、試験的にMetaGP(http://metagp.ism.ac.jp)というウェブアプリケーションの開発を行った。ユーザー側見れば、(1)計測したマイクロアレイデータをサーバーにアップロード,(2)データベースのメタ遺伝子データに基づき仮説集合を定義,(3)有意性スコアを算出,(4)FDRの計算,(5)統計的有意性に基づくバイオマーカーメタ遺伝子の予測結果を出力,というサービス形態になる.本研究のもう一つの課題は,メタ遺伝子のデータベース拡充である.既存ツールの多くがGOのメタ遺伝子解析に焦点を当てているが,GOは遺伝子の機能分類に過ぎない.当該年度では,これに転写モジュールとタンパク質相互作用の情報を追加することで,発現制御のシステム的理解に結び付けるべく、転写因子のプロモータ結合部位やタンパク質相互作用データベースの整理を行い、次年度以降の機能拡張へ向けた準備を実施した。
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