温室効果ガス観測技術衛星GOSAr(和名いぶき)は、温室効果気体である二酸化炭素(CO_2)とメタン(CH_4)の気柱量を導出することを目的として、2009年1月23日に打ち上げられた。導出された気柱量は、特に一般市民にも視覚的に理解しやすくするために、全球分布図として示すことが望まれる。気柱量は不規則な観測位置で得られたものであり、不規則な観測位置で得られた気柱量から全球分布図を作成する方法を、本研究では空間統計手法を用いて確立することを目的とする。 2009年度は、初めに空間統計手法の一つである通常Krigingにより全球分布を予測することを試みた。CO_2の吸収量および放出量が地表の土地被覆により異なることから、地表の土地被覆によって地表上大気におけるCO_2濃度の空間構造が異なることが考えられる。そこで、地表面の土地被覆の違いを簡単に陸域と海域として識別し、CO_2濃度の空間構造をNASAが公表する既存の全球CO_2濃度分布図を用いて調べ、陸上大気と海上大気のCO_2濃度の空間構造が異なることを示した。続いて、GOSArで予想される観測位置を設定し、各観測位置におけるCO_2濃度を既存の全球分布図より得て、シミュレーションデータを生成した。生成したシミュレーションデータを用いて、土地被覆の違いによるCO_2濃度の空間構造の違いを考慮して通常Krigingにより全球CO_2濃度分布図を予測した。更に、濃度の予測を行う位置周辺の局所的なCO_2濃度の空間的な変化を考慮し、CO_2濃度が空間的に非定常であるとして全球分布を予測する方法を、地表の土地被覆の違いによるCO_2濃度の空間構造の違いも考慮して検討した。観測点の数が数千から1万点ほどであるため、現在、このような大規模データへの適用方法が課題となっており、併せて既存の予測方法を参照して検討を行った(継続中)。
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