研究概要 |
地球温暖化ガスである二酸化炭素とメタンの濃度を全球の広い範囲で得ることを目的とした衛星GOSATが打ち上げられ、GOSAT観測により得られた二酸化炭素濃度から全球分布を予測する手法の開発を行った。GOSAT観測では、実際に二酸化炭素濃度が得られた観測地点数が少なかったため、全球分布予測のより一般的な記述を行うために、より観測地点数が多く観測地点の偏りが小さい衛星Aquaに搭載されたAIRSセンサにより得られた二酸化炭素濃度を対象として、全球分布予測手法の開発を行った。本研究では、既存の非定常空間予測手法であるUniversal Krigingに、観測大気下の土地被覆の違いを考慮した全球分布予測手法を確立する。地表付近の二酸化炭素の吸収量および放出量は、土地被覆により異なることが既存の研究により知られている。そのため、観測大気下の土地被覆種により二酸化炭素濃度の空間構造が異なることが考えられる。そこで、観測大気下の土地被覆の違いを考慮することによって、全球分布予測結果の改善が図れることが期待される。また、全球分布予測では、観測地点数が10,000程と多く、観測値の共分散逆行の逆行列が通常の方法では得られないことが知られており、全球分布を予測する上で課題となっている。本研究では、この課題に対して、共分散を逆行列の計算が可能な次元に縮約するようにしてモデル化を行い、土地被覆情報を考慮した共分散の逆行列を得ることが可能な予測手法の提案を行った。はじめに、観測大気下の土地被覆種を簡単に陸と海とし、陸と海で二酸化炭素濃度の空間構造が異なることを示した。続いて、全球分布を予測した結果を示した。土地被覆の違いを考慮して全球分布を予測した結果と考慮しないで予測した結果を比較したところ、予測値の標準偏差が土地被覆の違いを考慮することによって小さくなることが示され、全球分布を予測する際に観測大気下の土地被覆の違いを考慮することが有効であることが示された。
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