研究概要 |
本申請研究では,今年度の課題として,Nielsen & Jensen(2000)のTIMモデルに焦点を当て,そのモデルパラメータに対する最尤推定量の一致性の証明を掲げた.非定常マルコフ空間点過程モデルに対する統計的推測理論の構築は,世界的に見ても,現状では不十分である.本研究では,上述の課題に取り組み,どのような条件のもとで推定量が一致性を持つのか,そしてその条件は実用的にどのような言葉で表現されるのかという点を追求し,空間点過程の分野における理論的な貢献をすることが目的である. 空間統計学における漸近理論の枠組みは1通りではない.本研究では,類似の研究である定常プロセスに関する漸近理論に鑑み,観測領域を拡大させるという設定を採用することにした.そして,この設定の下でパラメータの最尤推定量の一致性を証明するため,空間エルゴード定理の適用を検討した. 注意すべき点は,TIMモデルが定常プロセスに適当な変換を施して得られる非定常モデルであるということ,そして,エルゴード定理は定常プロセスにおけるパラメータ推定量の一致性を示すための道具だということである.定常プロセスを適当な変換で歪めて非定常にしたTIMモデルにおいて,パラメータ推定量の一致性は,変換に適当な制約を持たせることで保存されるであろうと予想している,そして,今年度の検討では,そのおおよその目処を立てることができた. 今後は,変換が満たすべき条件を,より一層具体的に記述する必要があると考えている.
|