研究概要 |
タンパク質立体構造の表面においてリガンドが結合する部位と結合しない部位との違いとは何か,言い換えると,リガンド結合部位は進化の過程でどのようにして選択されてきたのか。研究代表者は最終的にはこれらの問いに答えることを目指している。ところで,タンパク質が多量体の場合,リガンド結合部位は各サブユニットのそれぞれに独立して生じる場合と,サブユニットの間にまたがって生じる場合とがある。よって,多量体タンパク質においては四次構造を考慮したリガンド結合部位の解析を行う必要があると思われる。本年度はタンパク質四次構造データセットの構築と,その意義について検討した。 タンパク質の四次構造情報をデータベースから取得し,リガンドが結合をした構造と,結合をしていない構造のペアを作った。丹念にチェックを重ね,最終的に126ペア,計252タンパク質の非冗長なデータセットが得られた。ここで収集した四次構造のデータは予測されたものであるが,論文を見つけることができた一部のタンパク質については,9割以上が論文に書かれていた多量体と一致していた。続いてこのデータセットを解析し,四次構造データセットに含まれる多量体の割合,多量体においてリガンド結合部位が生じている場所を解析した。単量体と多量体の割合はほぼ1対1であり,多量体では約半数のタンパク質においてリガンド結合部位がサブユニットの境界に生じていた。この結果は,タンパク質-リガンド間相互作用の研究において四次構造を考慮することの重要性を示している。
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