研究概要 |
本研究では,リガンド結合部位が生じる場所は進化の過程でどのようにして選択されてきたのかを明らかにすることを目指している。前年度は,本研究の解析に必要なデータセットの構築を行った。本年度は,このデータセットを用いてリガンド結合部位が生じている場所と,リガンド結合部位のサイズ・ダイナミクス・機能のそれぞれとの関係を調べた。 リガンド結合部位が生じている場所は次の3つに分類できる:1)複数ドメインの間,2)複数サブユニットの間,3)1つのサブユニット,1つのドメインの中。複数ドメインからなるタンパク質の場合,リガンド結合部位は1)にある割合が3)と比べて高く,また複数サブユニットからなるタンパク質の場合には2)にある割合が3)と比べて高かった。つまり,リガンド結合部位は複数のドメインおよびサブユニットの境界に生じやすいことが分かった。結合部位のサイズおよびダイナミクスとの関係では,1)と2)では3)よりもリガンド結合部位のサイズが大きく,またリガンド結合に伴う結合部位のサイズの変化が大きいことが分かった。一方で機能について調べると,転移酵素においては3)の割合が低く,逆に加水分解酵素においては3)の割合が高いことがわかった。つまり,リガンド結合部位が生じる場所はタンパク質の機能によって影響を受けていることが明らかになった。またそれは,リガンド結合部位のサイズやダイナミクスの違いに関係があるものと考えられる。
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