i)本研究課題の初年度に構築したシグナル変換反応カスケードによって、プログラム通りに指令DNAが順次生成されることを実証した。特定の配列に特異的にハイブリダイゼーションする蛍光色素修飾分子ビーコンを用いたリアルタイム蛍光測定を行い、塩基配列のちがいによる反応効率の詳細な差についてまで検証した。一連の指令DNA生成反応が設計通り進行するためには、各DNA分子および酵素の濃度をはじめ、多様な反応条件のバランスが重要である。生化学実験だけでは発見が困難な最適反応条件を同定するため、反応モデルを構築してシミュレーションを行った。 ii)制御クロック用の指令DNA生成に関して、生成量や時間の任意なプログラミングを実現するため、DNA分子や酵素の濃度、二本鎖形成部分の配列長によって指令DNA生成の様子がどのように変化するかを詳細に検証した。前年度の定量測定による妥当性検証において、モデル予測と実験の結果がよく一致することを確認済みの、複数のDNA配列が競合的に二本鎖を形成する過程のモデルも参考にしながら、多様な条件下での測定を行った。特に、本研究のシグナル変換反応についての時間間隔や生成量比が示す振る舞いについて、設計通りに反応が進行するかどうかを実験で確認した。以上の結果にもとづいて、シグナル変換反応をDNAロジックエンジンと同一の反応容器内で行い、プログラムした時間スケジュール通りに多段階の知的処理動作が自律的に進行するための条件を検証した。
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