糖質を含む化合物(エピトープ)と、それを抗原認識する立体構造未知分子である抗体とを対象として、コンピュータシミュレーションによる解析を行った。 まずは立体構造が明らかにされていない抗体分子の立体構造を精度よく予測するため、ホモロジーモデリング法を用いてモデル構造(1つ)の構築を行った。抗体においては、分子全体の構造を保持する役割を果たしているフレームワーク領域(FR:Framework Region)の予測は一次配列および立体構造において保存されやすく構造予測も比較的容易であるが、一方で、抗原認識の特異性を決定づける相補性決定領域(CDR:Complementarity-Determining Region)は多様な配列および立体構造を持つため予測が難しい上、その多様性が抗原認識の特異性を生み出しているため精度の高い構造予測が望まれる。本研究ではホモロジーモデリングで構築した構造を初期構造として、CDRにのみループモデリングを施して複数の候補構造を構築した。ここで用いたループモデリングの手法は構造既知の抗体の立体構造をもとに作成したデータベースを利用して、抗体中によく見られるループ構造(CDR)を構築するというものであり、計算の結果として、本研究においても多様なループ構造を持つ複数の立体構造を得ることができた。さらに、それら構造のタンパク質としての構造妥当性を評価し、適当な候補構造への絞り込みを行った。
|