研究概要 |
生物は未知環境に適応し,その時々に応じた行動を作りながら自然環境中で生きていくことが出来る.本研究では,我々がこれまでに提案した生物制御の概念である複合制御およびTacit learningを用いて環境に適応的は手の動きを創発することを目標としている.複合制御とは,脳内のニューロンの活動や細胞代謝のタンパク質反応,免疫系のB-cellやT-cellに代表されるような,単純かつ同質な計算素子がネットワークを作り,計算素子の自律的活動の積み重ねが全体としての行動を変化させ,未知の環境に適応していくという制御手法である. 1年目の研究において,複合制御により手動作の獲得の基礎的概念を確立するため,生物の持つ反射行動の意義とそれに伴う環境情報の取得,取得情報を利用した行動の創発の関連性を,論理的に記述することを試みた.さらに,提案手法をロボットの把持動作に応用するため,8DOFのロボットハンドの設計製作を行い,基本動作の確認を完了した. 本年度は,Tacit learningを用いたハンドの動きのシミュレーションを行い,物体を把持する場合,把持力に応じてその把持力を発生するのに適応的な姿勢を,実際の行動を通じて創発可能であることが示された.さらにシミュレーション結果を1年目に作成したハンドロボットに応用するための制御系の準備を行った.来年度は,シミュレーション結果をロボットを用いて検証すると共に,人間の器用な手の動作に近づくための制御則の検討を行う.
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