研究概要 |
本年度は、(1)ホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ(PIP5K)の2つのアイソフォームA,B(それぞれマウスPIP5Kβ,αに対応する)のノックアウト(KO)マウスおよび両者のダブル(D)KOマウスの作製、また(2)ホスファチジルエタノールアミン(PE)のフリップ・フロップに関する検討を行った。 1、PIP5K_B-KOマウスはメンデルの法則に従って生まれた。PIP5K_A-KO、D-KOマウスはメンデルの法則より予測される出生数より若干の減少が見られた。しかし生まれてきたこれらのKOマウスは正常に発育し、形態学的に大きな異常は認められなかった。行動学的解析による熱感覚、味覚の検討を行ったが、これらのKOマウスの感覚受容・伝達は野生型とほぼ同程度であることが分かった。なお我々はこの解析の間に、D-KOの雄が不妊であることを見出した。 2、培養神経細胞(PC12細胞、初代培養海馬神経細胞)を蛍光標識したPEプローブのRo09-0198により染色した結果、主に細胞膜内層に存在するPEが神経突起の先端付近では細胞膜外層に露出していることが分かった。PEのフリップ・フロップはP型ATPaseであるフリッパーゼにより制御されている。我々は現在、P型フリッパーゼの調節因子であるmROS3を用いて、これらのフリッパーゼの活性を人為的に調節し、PEのフリップ・フロップが持つ神経細胞の形態形成における機能を解析している。
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