Spikarはドレブリン結合タンパク質として単離されてきた分子であり、神経細胞では核と樹状突起スパインに存在する。これまでの研究からSpikarは核では転写調節因子として機能することが分かっており、細胞質では樹状突起スパイン形成に関与することが分かっている。本年度は、Spikarのより詳細な解析を行うためにノックアウトマウスの作出・解析、及び樹状突起スパイン形成機構の解析を行った。Spikarヘテロ欠損マウスは正常に発生・成長し、脳の形態異常も観察されなかった。しかしながら、ホモ欠損マウスは胎生致死であり新生仔は得られなかった。胎仔の発生過程を解析したところ、胎生8日頃くらいまでは野生型と変わらない発生を示したが、その後発育が止まり死に至ることが分かった。これらの事からSpikarが神経細胞だけではなく他の器官でも重要な働きをしており、固体の発生・生存に重要な分子である事が分かった。培養神経細胞においてSpikarの発現抑制を行うと、スパインとフィロポディアの両方が同じように減少することが分かっている。機能獲得実験を行ったところ、Spikarの過剰発現は神経細胞の突起形態を異常にし正常な発達を妨げた。一方、核移行シグナルに変異をもつ細胞質型Spikarは発達の初期、中期でフィロポディア形成を促進することが分かった。細胞質でのSpikarドレブリン依存を調べるためにRNAiでドレブリンの発現抑制を行うと、Spikarのフィロポディア形成促進機能が阻害された。また、ドレブリン結合領域を欠くSpikar変異体は野生型と比べて細胞内局在が大きく異なることが観察された。これらの事から、Spikarのスパイン形成機構は特に初期に重要でドレブリン依存的な部分があることが分かった。
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