研究課題
ショウジョウバエ胚・幼虫の蠕動運動をモデルとして、運動回路の機能発達機構の研究を行った。本年度は、回路の構成要素として、感覚神経細胞と介在神経細胞に注目した。まず、胚・幼虫の蠕動運動制御に関与することが知られているMD感覚神経細胞においてRNA干渉法を用いることで様々な遺伝子の発現を抑制し、運動に与える影響を調べた。その結果、感覚神経細胞におけるタンパク質分解系が、運動機能成熟に関与している結果を得た。さらに、感覚神経細胞の中枢内投射の形態を詳しく調べたところ、正常な投射パターンの形成にタンパク質分解系の機能が必要であることが見いだされた。この結果は、運動回路の構造と機能を正常に発達させるには、タンパク質分解系の制御が必要であることを示唆し、回路発達機構の解明へ向けて重要な要素の同定に至ったと考えられる。一方、運動制御に関与する介在神経細胞を同定するために、カルシウムイメージング法を用いてga14系統のスクリーニングを行なった。その結果、中枢神経内の少数(体節あたり約20個)の神経細胞に発現し、蠕動運動パターンに類似した伝播活動パターンを示すga14系統の同定に成功した。splitGFPを用いた解析によりこれらの介在神経細胞が、運動神経細胞を直接支配していることが示唆された。さらに、温度感受性ダイナミンタンパク質を用いて、この介在神経細胞の活動を抑制したところ、蠕動運動の速度が低下するという異常が現れた。これらのことから、この介在神経細胞は、運動制御において重要な細胞要素であることが明らかになった。これまで、運動制御に関わる介在神経細胞の中で、遺伝的な操作が可能なものは限られていた。この介在神経細胞の同定により、運動発達過程の遺伝学的解析がより進展すると考えられる。
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