研究課題
ショウジョウバエ胚・幼虫の蠕動運動をモデルとして、運動回路の機能発達機構の研究を行った。本年度は、前年度に同定した介在神経細胞群(PMSIと命名した)について詳しく解析した。PMSIは、中枢神経系内の少数(各体節に存在し、体節あたり約20個)の介在神経細胞である。前年度までのPMSIの解析から、PMSIが蠕動運動様の伝播活動パターンを示すこと、運動神経細胞に直接接続していること、活動阻害によって蠕動運動が遅くなることを見出した。本年度は、解剖学的・生理学的解析を進めた。抗体染色法によりPMSIがグルタミン酸作動性であることを見出した。先行研究から、グルタミン酸は、運動神経細胞に対して抑制性に作用することが示唆されている。そこで、PMSIの運動神経細胞に対する作用を調べるために、光感受性陽イオンチャンネルを用いて、行動中の幼虫のPMSIの活動を光照射によって亢進させたところ、照射直後に運動が停止した。特に、身体全体が弛緩していたことから、PMSIは運動神経細胞に対して抑制的に作用することが明らかになった。昨年見出した、PMSIを阻害したとき蠕動運動が遅くなる現象について詳しく調べるために、光感受性塩化物イオンポンプと電気生理学的手法により、蠕動運動伝播中の運動神経の活動が、PMSIの活動阻害によってどのような影響を受けるかを調べた。すると、PMSI阻害によって運動神経のバースト時間が長くなった。以上の結果から、運動回路が本来の速さでの蠕動運動を生み出すために、運動神経細胞を支配する抑制性の介在神経細胞が、運動神経細胞のバースト時間を制御することが重要であることが示唆された。運動パターンを生み出すための介在神経細胞の同定・機能解析は重要であるにも関わらずまだ進んでいない。本研究は、遺伝学的手法によるPMSIの同定・機能解析により、運動速度の制御機構を明らかにした。
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Development Growth and Differentiation
巻: (in press)
PLoS One
巻: 6 ページ: e29019
10.1371/journal.pone.0029019
http://bio.phys.s.u-tokyo.ac.jp/