本研究の目的はグルタミン酸受容体(GluR)複合体の分子動態と小脳皮質シナプス機能制御との関連を明らかにすることである。そのために、AMPA型受容体(AMPAR)の構成サブユニットおよび関連分子を、小脳皮質シナプスを構成する主要な細胞である小脳顆粒細胞、プルキンエ細胞(PC)、バーグマングリア(BG)、下オリーブ核神経細胞のそれぞれで選択的にノックアウト(KO)したマウスを作製し、生理機能解析を行うことで、PCシナプスにおいてGluR活性依存的にシナプス機能を制御する因子を同定し、シナプス機能制御とAMPARサブユニット構成の機能的関連を明らかにする。登上線維シナフスおよびBG特異的KOを可能とするために、下オリーブ核に発現するHtr5b遺伝子、BGに発現するCacng5遺伝子へのCreのノックイン(KI)マウスを作製した。これらKIマウスのCre活性については予備実験結果が得られており、概ね予想通りの活性を示すことが示唆されたが、Cre発現細胞種の特定など更に詳細な検証を行う。これらのマウスから数系統の選択的KOマウスを作製中であり、作製した一部のGluRα2、GluRα1/α3、β-cateninコンディショナルKOマウスについて、引き続き解析をおこなう。PC特異的GluRα2KOマウスの解析結果は2009年北米神経科学会にてポスター発表をおこなった。また、BG特異的β-catenin KOマウスにおいて小脳層構造の形成異常という興味深い予備実験結果が得られたので、形態学的解析を中心に研究を進める。
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