研究概要 |
本研究の目的は、大脳基底核-大脳皮質間のループ回路によってcentral pattern generator (CPG)を制御する歩行モデルを構築することである。このモデルが構築できれば、パーキンソン病(PD)患者の歩行制御異常のメカニズムに迫ることができる。目的を達成するため、研究内容を歩行解析と歩行モデルにわけて実施した。 歩行解析については、高齢健常者と高齢PD患者(重症度:ヤールII~III度)における歩行特徴の違いを詳細に記述するため、過去に上記被験者でモーションキャプチャを用いて計測した歩行動作データを新たに解析し、関節座標と関節角の時間変化を比較した。また、過去にフォースプレートを用いて計測した歩行時の床反力データについて新たにカオス時系列解析を行い、床反力の時間変化波形から片足立脚期の3分の1の時間遅れ座標系で軌道を再構成し相関次元を求めた。その結果、相関次元は高齢PD患者の方が有意に低くなることがわかった。さらに、これまでの歩行解析の総括として、判別分析を用いて高齢PD患者の歩行障害に特有な指標を特定し、その成果を国際会議にて報告した。 歩行モデルについては、先行研究(Taga 1995, Biol Cybern 73:97-111, Jo & Massaquoi 2004, Biol Cybern 91:188-202など)を参考にして、関節や体要素ごとにx座標、y座標、関節角θに関する運動方程式を立て、神経振動子を用いたCPGによりリズムを発生させて歩行させるモデルを構築した。簡単のため、ここでは下肢部に注目した2次元平面の動きを再現するモデルとした。このモデルを用い、大脳基底核-大脳皮質ループ回路の違いにより、歩行の制御が変わることを確認した。(730字)
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