研究概要 |
22年度においては、21年度に行った逆行性レンチウイルスベクターのエンベロープ糖タンパク質の改変により、高い逆行輸送性を持つウイルスベクターを取得したことで、これを用いて標的とする視床-線条体神経路をこれまで以上に高効率で遺伝子標識したモデル動物を得た。導入遺伝子をヒトインターロイキン2受容体αサブユニット(hIL2Rα)遺伝子に組換えたウイルスベクターを線条体に注入して、逆行性に標識された線条体へ投射する視床のニューロンに対し、細胞標的法を用いてイムノトキシン(IT)を投与した。これにより視床で標識されたニューロンを除去して視床-線条体神経路が特異的に遮断されたモデル動物を作出、様々な行動生理学的解析を行った。 両側線条体にhIL2Rαを発現するベクターおよびコントロールとしてGFPを発現するベクターを注入し、5週間生存させた後、両側視床にITおよびコントロールとしてPBSを注入した4群の動物において行った(hIL2Rα-IT(視床-線条体神経路遮断群),hIL2Rα-PBS,GFP-IT,GFP-PBS(視床-線条体神経路非遮断群)。21年度の成果として、視床-線条体路は基本的な運動能には影響を与えないことを明らかとした。 次に、2弁別学習における視床-線条体路の役割を明らかにするため、オペラント実験を行ったところ、hIL2Rα-IT(視床-線条体神経路遮断群)においてのみ、学習獲得が低下し、正反応時間、無反応率が上昇する結果を得た。このことは、視床-線条体路が学習に大きく関与する神経路であることを示唆した。
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