| 研究概要 |
先行研究において、新しくGliogenic competency(グリアへの分化能を発揮することができる適格性、グリア誘導シグナルへの応答能)の獲得という段階があり、Neurogenesis-to-gliogenesis switchingを含む神経幹細胞の発生依存的な分化能の変化にCOUP-TFI/IIが必須であるということを明らかにした(Naka H, Nature Neuroscience, 2008)。
しかし、このGliogenic competency獲得の分子メカニズムは全く分かっていない。そこで本研究は、神経幹細胞の発生依存的な分化能の変化の制御において鍵となるこのGliogenic competency獲得の分子メカニズムの解明を目的としてCOUP-TF下流遺伝子の探索を行ってきた。
今年度はマイクロアレイやChIP-seq解析で得られた候補遺伝子について、先行研究でも実績のあるレンチウイルスとNeurosphere法を組み合わせた機能的スクリーニングを行い、COUP-TF下流遺伝子の同定を昨年度から引き続き行った。その結果、Is1-1陽性ニューロンの分化に関与する遺伝子と、Neurogenesis-to-gliogenesis switchingに関与する遺伝子を同定することができた。このことはニューロンサブタイプへのspecificationとcompetence changeは独立する機構で制御されており、発生段階ではCOUP-TFの発現を起点に協奏的に機能するということを示唆している。現在は本研究の目的である神経幹細胞の時間特異性の分子メカニズムの解明に向け、in vitroおよびin vivoの実験を通してcompetence changeの分子メカニズムについての詳細な検討を行っている。
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