二次聴覚神経が形成する神経回路構造を単一細胞レベルで精密に解明する目的で、高次脳領域に投射する二次聴覚神経AMMC-A1の解析を行った。まずはこの二次神経線維を構成する神経細胞の数を計測し、片半球に3個の細胞体から構成されることを見いだした。また、AMMC-A1神経を選択的に標識するショウジョウバエGAL4系統を用いて単一細胞をランダムに標識できる熱ショック・フリップアウト法を行い、単一のAMMC-A1神経の形態を同定することに成功した。その結果、AMMC-A1神経は脳の同側では一次聴覚野であるAMMCの中で高周波数の情報を受け取る領域Aと二次聴覚野であるVLPに投射し、さらにそこから交連線維を経由して対側のVMPに投射することが示された。次にAMMC-A1の神経出力部位を同定する目的で、二次聴覚神経に二種類のマーカータンパク質DsRed、n-syb::GFPを共発現させ、各神経細胞の全体構造をDsRedで、出力シナプスの位置をn-syb::GFPで可視化したところ、出力部位はVMPのみに局在した。また、各種の神経伝達物質やその合成酵素に対する抗体染色を行い、AMMC-A1は興奮性伝達物質であるアセチルコリンを合成していることを示した。以上の結果から、AMMC-A1神経が形成する神経回路は、高周波数の音情報を高次脳領域VMPに伝達する経路であることが示唆された。
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