研究課題
研究代表者がこれまでに報告したように、ES細胞からのin vitroの分化系において、自己組織的に大脳皮質神経組織が形成される。ほ乳類生体の神経系発生過程おいても、同様な自己組織的なメカニズムが働いていることが考えられるが、その際の各細胞の挙動や組織形態形成の分子的な実態についてはほとんど明らかにされていない。その理由として、ダイナミックな現象であるほ乳類胎生期の神経系発生過程をリアルタイムで可視化することが困難なことが挙げられる。ES細胞からの分化系では、未分化ES細胞の状態から神経細胞へと分化する全過程がin vitroにおいて観察可能であり、任意のタイミングで様々な刺激を加えることも可能である。本年度は前年度までに構築したイメージングシステムを用いて、マウスES細胞からの神経組織分化過程を3次元で可視化する実験系を開発した。観察結果から、基底膜成分を補強することによってより安定した神経上皮構造が長期間にわたって維持出来ることが明らかになった。また、網膜組織に安定的に分化させる実験条件も合わせて明らかにした。さらに、ES細胞から神経上皮構造を保ったまま網膜組織へ分化誘導することによって、生体における眼杯(optic cup)のような形態を持った三次元組織をin vitroで構築することができた。またこの組織を長期間培養することによって明確な層構造を持った網膜組織をin vitroで分化することに成功した。マーカーの発現パターンから、この網膜組織は生後10日マウス網膜に相当する分化程度を示していた。これらの実験結果は、将来の再生医療の実現に向けて重要な意味を持つものと考えられる。
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Journal of Nuroscience
巻: 31 ページ: 1919-1933
Nature
巻: (印刷中)
Cell Stem Cell
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