「大脳皮質と皮質下神経核との相互作用の解明」を通して、脳をシステムとして理解することを目指している。本研究課題では、コリン作動性神経核であるマイネルト基底核[NBM]の誘発する大脳可塑性が、大脳皮質微小回路の活動をどのように変化させるか研究する。具体的には、麻酔下マウスのNBMを電気刺激するのと同時に、体性感覚刺激(ヒゲなど)を行うことで大脳可塑性を誘発する。この時の大脳皮質細胞群(神経細胞・グリア細胞)の活動変化を2光子顕微鏡を用いて二次元可視化解析する。 初年度である平成21年度は大脳可塑性を誘発する最適条件を確立した。そのために、マウス頭蓋を水平に保持するための治具を作成したり、顕微鏡下で刺激電極位置を調整可能とする工夫を行った。その結果、NBM刺激とヒゲ刺激とを同時に刺激することで、大脳皮質における興奮性後シナプス集合電位が増大すること(LTP)を再現できた。ただし、これまでの文献では同時刺激によるLTPの程度は50~100%と報告されていたが、近年のGilbertらの報告によってそれらの計測条件では計測が不安定であることが指摘されていた。本研究では計測の不安定要素を取り除くことで、LTP程度が20~30%であることを改めて示した。来年度は、LTP前後における大脳皮質細胞の活動変化を2光子顕微鏡を用いて二次元可視化解析することで、コリン作動性神経核の大脳皮質への作用を微小回路レベルで解析する。
|