ヒトの言語能力獲得に必要な脳域としてBroca領域(言語領域)特定されている。しかし、ヒト言語獲得の分子機構は不明であり、その解明には、非侵襲性な方法による解析とともに分子生物学、生理学アプローチを基礎とした神経回路の解析および言語障害の病因の解析を基盤とした分子機構の解析が必要であり、ヒト以外の動物実験系が必須である。動物はヒトと同様な言語を持たないとされているものの、マウスには言語に類似した超音波領域(USV)でのコミュニケーション能力を有しているという報告がある。そこで申請者は、ヒト言語障害の変異遺伝子FOXP2(R553H)に対応したマウスFoxp2(R552H)を導入したマウスモデル(Foxp2(R552H)-ノックイン(KI)マウス)を作成した。本研究はヒト言語障害遺伝子変異を導入したFoxp2(R552H)-KIマウスの機能障害の解析を基盤として、USV(言語)能力獲得に必要な分子機構を明らかにすることを目的する。解析を通して、マウスUSVとヒト言語が脳で共通の分子機構をもつことを明らかにしてきた。さらに、Foxp2(R552H)KIマウス脳における神経細胞でのFoxp2(R552H)の局在を調べたところ、正常マウスでFoxp2は核に存在し、変異マウスでは一部以外の細胞質にも存在した。Foxp2(R552H)KIマウスと正常マウス脳で発現する遺伝子の解析し、Foxp2が制御するUSV(言語)関連遺伝子候補を数個見出した。現在、これらの遺伝子について解析中である。また、小脳プルキンエ細胞に特異的なPcp/L7プロモーターを用いてC末端にMycTagをつけた正常Foxp2を発現させたマウスを作成した。このマウスについて解析中である。
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