ヒト言語障害変異に対応する変異Foxp2(R552H)-ノックイン(KI)ホモマウスはUSV障害と小脳形成不全に関わる運動性の障害を有する。本研究はFoxp2(R552H)-KIマウスの機能障害を手掛かりとして、USV能力獲得に必要な分子機構の解明を目指している。 Foxp2はFoxp family以外にも、CtBPなどのCo-repressorと複合体を形成している。平成23年度は、前年度Foxp2(R552H)-KIマウスおよび正常マウス脳で発現する遺伝子について解析し、Foxp2が制御するUSV(言語)関連遺伝子の候補の中の1つであるCNTNAP2のmRNAがFoxp2(R552H)-KIマウスで増加していることが明らかとなり、小脳プルキンエ細胞のCTBPに関与していることが示唆された。Foxp2-cerebellum-Tg(Mycタグ付加)マウス小脳でFoxp2と結合している内在性タンパクを固定化したmyc抗体のカラムを利用して分離した。現在N末端解析、TOFF-MS解析により小脳プルキンエ細胞内でFoxp2に結合しているタンパク質の同定を試みている。 またC57BL/6Jへの10世代までバッククロスを行なったFoxp2(R552H)-KIマウスとFoxp2-Tgマウスと交配させたハイブリッドマウス、正常マウス、Foxp2(R552H)-KIマウスについてハイブリッドマウスのUSV、行動機能、致死の回避などを解析した。その結果、ホモ仔マウスは、親マウスから乳をもらえないことによる餓死を防ぐことはできなかったものの、USV障害についてはヘテロマウスおよびホモマウスでUSVの回復が認められた。さらに小脳プルキンエ細胞の発達とデンドライト形成について、カルビンジェン、シナプトフィシン、受容体の抗体を用いて、免疫染色解析を行ったところ、小脳発達不全についても回復傾向を示した。
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